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「オーディオブックは、普通に本を読むのと同じなの?」
「耳で聴くだけでは、内容を理解したり記憶したりできないのでは?」
オーディオブックを利用すると、このような疑問を持つ人もいるでしょう。
結論からいうと、文章の内容を理解するという点では、読む場合と聴く場合に大きな差が見られなかった研究があります。
ただし、どのような文章でも理解度や記憶が完全に同じになるわけではありません。
文章の難しさ、聴く速度、予備知識、集中できる環境、同時に行う作業などによって結果は変わります。特に、内容を推測しながら読む必要がある文章や、何度も見返したい専門書では、文字で読むほうが適している可能性があります。
本記事では、国内外の論文や調査をもとに、オーディオブックと文字による読書の違いを整理します。
本記事は、筆者が実際にすべての研究条件を検証したものではありません。国内外の原著論文、メタ分析、公的機関・業界団体の調査を確認し、オーディオブックの理解度や記憶、ながら聴きについて整理しています。
先に結論|オーディオブックと読書は完全に同じではない
研究から読み取れる結論を先にまとめると、次のようになります。
- 文章全体の理解度では、読む場合と聴く場合に明確な差が確認されなかったメタ分析がある
- 書かれている情報をそのまま答える問題では、差がほとんど見られなかった
- 推論が必要な問題では、読むほうが有利だった
- 自分のペースで戻ったり読み直したりできることは、文字の強みになる
- 聴きながら別の作業をすると、作業内容によっては注意が分散する
- 脳内の意味処理には共通点があるが、記憶や学習効果まで完全に同じとは限らない
- 文字を追う力や漢字を読む力は、オーディオブックだけでは身につけにくい
したがって、「オーディオブックは読書ではない」と切り捨てる必要はありませんが、「本を読むのとすべて同じ」ともいえません。
物語を楽しむ、知識の概要をつかむ、読書時間を増やすといった目的には活用しやすい一方、細部を確認する勉強や専門的な内容では文字との使い分けが必要です。
オーディオブックは「読書」に入るのか
「読書」という言葉をどのように定義するかによって答えは変わります。
文章を目で追り、文字を読み取る行為だけを読書と呼ぶなら、オーディオブックは読書とは異なります。
一方で、著者が書いた内容を受け取り、物語や知識を理解する行為まで含めるなら、オーディオブックも「聴く読書」と考えられます。
大切なのは、呼び方を決めることではありません。
何を目的に本へ触れるのか、その目的をオーディオブックで達成できるのかを考えるほうが実用的です。
文字を読む練習が目的なら、目で読む必要があります。物語を楽しむことや、家事中に知識へ触れることが目的なら、音声でも役立つ可能性があります。
理解度は読書とオーディオブックで変わる?
全体では明確な差が確認されなかった
2022年に発表されたメタ分析では、読む場合と聴く場合の理解度を比較した46件の研究、合計4,687人分のデータが分析されました。
その結果、理解度全体について、読む場合と聴く場合に統計的に信頼できる差は確認されませんでした。
複数の研究をまとめた結果であるため、「音声では文章を理解できない」と一括りにする根拠は乏しいと考えられます。
ただし、この結果だけで「オーディオブックと読書は常に同じ」と判断することはできません。文章の種類や問題の内容、読むペースによって結果が異なっていたためです。
参考:Listening Ears or Reading Eyes: A Meta-Analysis of Reading and Listening Comprehension Comparisons
推論を必要とする内容では読書が有利だった
同じメタ分析では、理解度テストの種類による違いも調べられています。
文章に直接書かれた内容を確認する「文字どおりの理解」では、読む場合と聴く場合にほとんど差がありませんでした。
一方、複数の情報を結びつけたり、書かれていない内容を推測したりする「推論的理解」では、読む場合が有利でした。
文字で読めば、前のページへ戻ったり、重要な部分を見直したりできます。こうした自分のペースで情報を確認できることが、複雑な理解を助けた可能性があります。
そのため、次のような本は文字で読むか、音声と文字を併用するほうが扱いやすいでしょう。
- 専門用語が多い本
- 図表や数式を確認する必要がある本
- 論理関係が複雑な本
- 資格試験や仕事のために覚えたい本
- 引用やメモを残したい本
脳は聴く場合と読む場合で同じように働く?
2019年に発表された脳画像研究では、参加者が同じ物語を聴いた場合と読んだ場合の脳活動が調べられました。
その結果、言葉の意味を扱う大脳皮質の多くの領域で、聴いた場合と読んだ場合の意味表現に強い共通性が見られました。
これは、目と耳という異なる入口から情報を受け取っても、意味を処理する段階では共通する部分があることを示しています。
ただし、この研究の参加者は9人で、調べたのは主に脳内における意味表現です。
脳の反応が似ていることは、理解度、長期記憶、集中力、学習成果がすべて同じであることを意味しません。
「聴くのも読むのも脳にとって完全に同じ」と結論づけるのは飛躍があります。
オーディオブックでも内容を記憶できる?
オーディオブックでも、内容を理解して記憶することは可能です。
ただし、「長期間どの程度覚えていられるか」について、あらゆる年代やジャンルを対象にした十分な研究がそろっているとはいえません。
読むことと聴くことを比較した研究では、内容を聴いた直後など、比較的短い間隔で理解度テストを行うものもあります。その結果を、そのまま数週間後や数か月後の長期記憶へ当てはめることはできません。
また、記憶には情報の受け取り方だけでなく、次のような要素も関係します。
- 内容への興味
- すでに持っている知識
- 集中していた時間
- 復習した回数
- 思い出す練習をしたか
- メモや要約を作ったか
- 睡眠や疲労の状態
そのため、「聴いたから覚えられない」「読めば必ず覚えられる」という単純な関係ではありません。
覚えたい内容なら、章ごとに停止して要点を思い出したり、短いメモを残したりするほうが、ただ最後まで流し続けるよりも確実です。
オーディオブックは集中しにくい?
聴く条件では注意がそれやすかった研究もある
音声は再生を続けているだけでも先へ進みます。考え事をしている間に、内容を聞き逃してしまうこともあります。
2013年の研究では、文章を黙読する、音読する、他人の音読を聴くという条件が比較されました。その実験では、聴く条件でマインドワンダリング(読書とは無関係な考えに注意がそれること)が最も多くなりました。
参考:The way we encounter reading material influences how frequently we mind wander
ただし、これは特定の条件で行われた実験です。すべてのオーディオブック利用者が、文字を読むより集中できないと証明したものではありません。
ナレーターとの相性や本への興味、再生速度、利用環境によっても集中しやすさは変わります。
数分間内容を思い出せないことが続いたら、再生速度を落とすか、少し巻き戻すのがおすすめです。
ながら聴きにも効果はある?
単純作業なら本に触れる時間を増やしやすい
オーディオブックの大きな利点は、文字を見られない時間にも本へ触れられることです。
例えば、次のような場面で利用できます。
- 散歩をしているとき
- 洗濯物を畳んでいるとき
- 食器を洗っているとき
- 電車で立っているとき
- 就寝前に目を休めたいとき
作業が単純で慣れていれば、内容を追えることもあるでしょう。
これまで読書に使えなかった時間を活用できるため、一冊からすべてを記憶できなくても、知識や物語に触れる機会を増やせること自体が利点です。
判断が必要な作業では理解度が下がる可能性がある
ながら聴きの効果は、同時に行う作業によって変わります。
料理の手順を初めて確認する、複雑な資料を作る、文章を書くといった作業では、オーディオブックと作業の両方が言語的な注意を必要とします。
このような場面では、音声が流れていても内容をほとんど覚えていない可能性があります。
ながら聴きに向いているのは、あまり考えなくても進められる作業と、比較的理解しやすい本の組み合わせです。
運転中は安全を最優先する
運転シミュレーターを使った研究では、オーディオブックが運転へ与える影響は、道路環境の複雑さや個人の認知能力によって変わりました。
単調な道路では覚醒状態の維持に関係する可能性が示された一方、複雑な道路では注意を奪う可能性もあります。
参考:Good distractions: Testing the effects of listening to an audiobook on driving performance
この研究は、オーディオブックを聴けば運転が安全になると保証するものではありません。
**交通量が多い場所、初めて走る道、悪天候、駐車や合流など、判断が必要な場面では運転を優先してください。**少しでも気が散ると感じたら、再生を停止する必要があります。
倍速で聴いても理解できる?
オーディオブックは、1.2倍や1.5倍、2倍などに再生速度を変更できます。
講義動画や音声教材を使った研究では、一定の範囲まで速度を上げても理解度が大きく下がらなかった例があります。しかし、こうした研究の多くは短い教材や講義を対象としており、長時間の小説や専門書と同じ条件ではありません。
また、理解できる速度は次の要素で変わります。
- 本の難しさ
- 内容についての予備知識
- ナレーターの話す速さ
- 聴き慣れているか
- 年齢
- ながら聴きか、集中して聴くか
そのため、「2倍速までは理解度が落ちない」と一律に断定することはできません。
初めて聴く本は標準速度から始め、遅く感じたら少しずつ上げる方法が安全です。巻き戻しが増えたり、人物関係や論理の流れが分からなくなったりしたら、速度を下げましょう。
速く聴き終えることより、内容を受け取れることのほうが重要です。
文字を見ながら聴くと理解しやすくなる?
読むことと聴くことを同時に行う方法についても研究されています。
30件の研究、合計1,945人を対象としたメタ分析では、文字を読みながら音声を聴く方法に、小さな効果が確認されました。
ただし、読むだけの条件が自分のペースで進められた研究に限ると、信頼できる差は確認されませんでした。研究間のばらつきも大きく、誰にでも併用が優れているとはいえません。
参考:Does Reading while Listening to Text Improve Comprehension Compared to Reading Only?
文字と音声の併用は、次のような人に試す価値があります。
- 文字だけでは集中が続きにくい人
- 読み方を確認したい人
- 第二言語を学んでいる人
- 難しい箇所だけ文字でも確認したい人
一方、音声があることで自分の読むペースを乱される人もいます。併用が合わなければ、無理に続ける必要はありません。
オーディオブックにはアクセシビリティ上の利点もある
オーディオブックは、忙しい人の時短手段だけではありません。
視覚障害などにより一般的な印刷物を読むことが難しい人にとって、音声図書は本へアクセスする重要な手段です。
また、長時間文字を見ると疲れやすい人や、画面から目を離したい人にとっても選択肢になります。
ただし、オーディオブックが読字障害などを治療するわけではありません。利用しやすい形式を増やし、本へ触れるための障壁を減らすものと考えるのが適切です。
オーディオブックの需要は増えている
米国のAudio Publishers Associationが2026年に公表した調査では、2025年の米国オーディオブック売上は24億3,000万ドルで、前年から9%増加したと報告されています。
また、米国成人の58%にオーディオブックを聴いた経験があり、2025年に提供されたアクティブタイトルは75万点を超えたとしています。
参考:Audio Publishers Association Research Surveys
これは米国の市場調査であり、日本の利用状況をそのまま示すものではありません。それでも、音声で本を楽しむ方法が一時的な珍しいサービスではなく、読書形式の一つとして広がっていることは分かります。
英国National Literacy Trustによる子ども・若者を対象とした調査でも、音声コンテンツを楽しむ人の割合や、音声をきっかけに読書へ興味を持ったと答えた人の割合が報告されています。
ただし、この調査にはオーディオブックだけでなくポッドキャストも含まれ、回答者の自己申告に基づきます。客観的な理解度テストの結果ではありません。
参考:Children and young people’s listening in 2024
目的に合わせてオーディオブックと文字を使い分ける
オーディオブックと文字のどちらが優れているかを、一つの答えに決める必要はありません。
オーディオブックと相性がよい使い方
- 小説やエッセイを楽しむ
- 読んだことがある本を復習する
- 興味のある分野の概要を知る
- 散歩や単純な家事の時間を活用する
- 目を休めながら本に触れる
- ナレーターの朗読を楽しむ
文字と相性がよい使い方
- 図表や数式を確認する
- 引用箇所を探す
- 専門用語を書き留める
- 前後を何度も行き来する
- 資格試験のために細部を覚える
- 読字そのものを練習する
一冊をすべて同じ方法で読む必要もありません。
最初はオーディオブックで全体像をつかみ、重要な章だけ電子書籍や紙の本で読み直す方法もあります。
実際にサービスを選ぶ場合は、**「Audibleとaudiobook.jpはどっち?料金・聴き放題・使い方を比較」**で、作品数だけでは分からない違いや選び方を整理しています。
オーディオブックを頭に残しやすくする7つのコツ
オーディオブックの内容が頭に入りにくい場合は、次の方法を試してみてください。
1. 最初は標準速度で聴く
再生速度を上げるのは、本やナレーターに慣れてからでも遅くありません。
2. 章の区切りで内容を思い出す
再生を止めて「この章では何を説明していたか」を自分の言葉で思い出します。
3. 分からない部分をそのままにしない
数分間内容を追えていなかったら、巻き戻して聴き直します。
4. 難しい本を複雑な作業と組み合わせない
専門書や登場人物の多い小説は、散歩や休憩中など、注意を向けやすい場面で聴きましょう。
5. 必要な箇所だけ文字でも確認する
固有名詞、数字、図表、重要な定義は、紙や電子書籍で確認したほうが分かりやすい場合があります。
6. 短いメモを残す
詳しいノートを作らなくても、印象に残った点を一つ書くだけで振り返りやすくなります。
7. 聴き終えた冊数だけを目的にしない
再生を終えても、内容をまったく思い出せなければ目的を達成できていない可能性があります。速度や冊数より、自分が本から何を得たいかを優先しましょう。
実際に聴いても内容が頭に入らない人は、オーディオブックに集中できない原因と具体的な対処法も参考にしてください。
よくある質問
オーディオブックを聴くことは読書といえますか?
文字を目で読む行為とは異なりますが、著者の文章を受け取り、物語や知識を理解する方法の一つです。
読字の練習という意味では文字による読書の代わりになりません。一方、内容に触れることが目的なら「聴く読書」と考えてよいでしょう。
オーディオブックは頭に入らないのですか?
音声だから必ず頭に入らないわけではありません。
複数の研究をまとめたメタ分析では、理解度全体について読む場合と聴く場合に信頼できる差は確認されませんでした。ただし、難しい内容や推論問題では読むほうが有利になる可能性があります。
オーディオブックを2倍速で聴いても大丈夫ですか?
すべての人や本に共通する速度はありません。
内容を説明できるか、巻き戻しが増えていないかを目安にしてください。理解できていない場合は、速度を下げる必要があります。
散歩しながら聴いても効果はありますか?
内容を追えているなら、本へ触れる時間を増やす方法として活用できます。
ただし、交通状況など周囲の安全確認を優先してください。複雑な内容を覚えたい場合は、ながら聴きではなく集中して聴くほうが適しています。
オーディオブックだけで紙の本を置き換えられますか?
目的によっては置き換えられますが、すべての用途を代替できるとは限りません。
物語を楽しむ用途には使いやすい一方、図表の確認、引用、詳しい学習には紙や電子書籍が便利です。どちらか一方に決めず、目的に合わせて使い分けるのがおすすめです。
まとめ|聴く読書にも役割がある
オーディオブックと文字による読書は、完全に同じではありません。
一方で、研究では文章全体の理解度について、読む場合と聴く場合に明確な差が確認されなかったという結果も出ています。
ただし、推論を必要とする内容や、自分のペースで何度も見返したい本では文字が有利になる可能性があります。ながら聴きも、同時に行う作業が複雑になるほど注意が分散しやすくなります。
オーディオブックを「読むより劣った方法」と考える必要はありません。
物語を楽しむ、読書時間を増やす、概要をつかむといった目的にはオーディオブックを使い、細部を覚える場面では文字を使う。
それぞれの特徴を理解し、自分の目的に合った方法を選ぶことが大切です。
オーディオブックを実際に試してみたい人は、Audibleやaudiobook.jpの対象作品と無料体験の条件を確認してみてください。
