※この記事はPRを含みます。

停電に備えてポータブル電源を買う。これは分かります。

しかし、同じ予算でモバイルバッテリーを大量に買ったらどうなるのでしょうか。

20,000mAhを10台集めれば、合計200,000mAh。数字だけを見ると、かなり強そうです。1台が故障しても残り9台が戦えますし、家族へ1台ずつ配ることもできます。

これはもう、ポータブル電源を1台買うより合理的なのではないか。

今回はそんな力技を、容量、価格、重量、出力、充電時間、安全性から本気で計算します。

実際にモバイルバッテリーを10台購入して停電生活を行った体験談ではありません。メーカーの公式仕様と公的機関の資料を使った試算です。

先に結論

スマートフォンやUSBライトを守るだけなら、モバイルバッテリー10台は意外と強い方法です。しかし、10台の出力を合体させることはできず、一般的な100V家電もそのままでは動かせません。スマホ中心なら分散型の10台、高出力家電やACコンセントが必要ならポータブル電源が有利です。

今回10台集めるモバイルバッテリー

計算に使用するのは、Anker Zolo Power Bank(20000mAh・45W・Built-In USB-Cケーブル)です。

容量20,000mAh
USB-C最大出力45W
USB-A最大出力22.5W
複数ポート使用時合計最大15W
本体への最大入力30W
満充電時間の目安約4時間
重量約365g
公式価格5,990円

20,000mAh、USB-Cケーブル内蔵、最大45W出力という構成で、メーカーはiPhone 17を約4回充電できると案内しています。

本当に10台買うことを勧める記事ではありませんが、今回の計算役としては分かりやすい製品です。

10台集めると合計200,000mAhになる

まずは、単純に10倍します。

項目1台10台
容量20,000mAh200,000mAh
重量約365g約3.65kg
公式価格5,990円5万9,900円
iPhone 17充電目安約4回単純計算で約40回
満充電に必要な作業1台を約4時間10台をそれぞれ充電

重さは約3.65kg。想像していたより軽いと感じました。10個の塊を見ると大げさですが、600Wh級ポータブル電源より軽い組み合わせになります。

価格も約6万円なので、中容量ポータブル電源と比較できる範囲です。

この時点では、10台方式がかなり優秀に見えます。

mAhのままではポータブル電源と比較できない

モバイルバッテリーはmAh、ポータブル電源はWhで容量が表示されることが多いため、そのままでは比較できません。

Whは、次の式で概算できます。

Wh=Ah×電圧

20,000mAhは20Ahです。内蔵セルの公称電圧を3.7Vと仮定すると、1台の理論容量は次のようになります。

20Ah×3.7V=74Wh

10台なら、理論上は約740Whです。

740Whはセル電圧を3.7Vと仮定した理論値です。実際の製品に記載された定格エネルギーを優先してください。また、電圧変換や充電時の損失があるため、740Whをすべて接続機器で使えるわけではありません。

モバイルバッテリーの容量と充電回数の基本は、モバイルバッテリーとは?容量・出力・充電回数の見方を初心者向けに解説で詳しく紹介しています。

変換ロスを含めると実際には何Wh使える?

モバイルバッテリー内部のセルと、スマートフォンへ出力するUSB電源では電圧が異なります。電圧変換、ケーブル、端末側の充電回路などで損失が発生します。

ここでは計算を単純にするため、理論容量の80%を利用できると仮定します。これは今回の比較用に置いた条件であり、対象製品の実測値ではありません。

740Wh×0.8=592Wh

スマートフォン1台のバッテリーを15Whと仮定すると、計算上は約39回分です。

592Wh÷15Wh=約39.5回

Ankerが示す1台あたり約4回、10台で単純計算約40回という目安にも近い数字です。ただし、端末を操作しながら充電した場合や、低温・高温環境では結果が変わります。

Jackery 600 Plusと比べてみる

比較対象として、容量632WhのJackery ポータブル電源600 Plusを使います。

項目モバイルバッテリー10台Jackery 600 Plus
表示容量合計200,000mAh632Wh
理論上のWh約740Wh※632Wh
重量約3.65kg約7.3kg
USB出力各バッテリーから個別に出力本体からまとめて出力
AC出力なし定格800W
満充電10台を個別に充電AC急速充電で最速約1時間
故障時残りのバッテリーを使える本体故障時は全容量を使えない
持ち運び小分けして運べる1台で運ぶ

※20,000mAhを20Ahへ換算し、セル電圧3.7Vと仮定した計算値です。

容量と重量だけなら、モバイルバッテリー10台が優勢です。約3.65kgで理論上約740Whなので、数字だけを見るとかなり効率的です。

ところが、電気の使い方まで見ると状況が逆転します。

10台の45Wを合体して450Wにはできない

Anker Zolo Power Bankは、USB-C単ポートで最大45Wを出力できます。

10台あるなら、45W×10台で450W。電子レンジや電気ケトルに少し近づいたように見えます。

しかし、一般的なモバイルバッテリーの出力を勝手に並列接続し、1台の機器へまとめることはできません。

最大45Wを10台がそれぞれ別のスマートフォンへ出すことはできますが、10台を合体させて1台へ450Wを供給する仕組みではありません。

さらに、この製品には家庭用ACコンセントがありません。USBで動く機器には強い一方、一般的な100V家電はそのままでは使えません。

10台は合体しない

モバイルバッテリーを10台集めても、1台の巨大なポータブル電源にはなりません。容量は合計できますが、出力は各バッテリーに分かれたままです。メーカーが対応を明記していない並列接続や改造は行わないでください。

モバイルバッテリー10台でできること

家族のスマートフォンを同時に充電する

10台を家族へ分配すれば、それぞれが自分のスマートフォンを充電できます。

ポータブル電源を家の中央に置く場合と違い、別の部屋や避難先へ持っていけるのは明確な強みです。

USBライトや防災ラジオを動かす

USB給電に対応するLEDライト、小型扇風機、ラジオなども使えます。機器ごとにモバイルバッテリーを割り当てれば、配線も分散できます。

一部を持ち出して残りを自宅に置く

避難する人が2台持ち、家に残る人が8台使うといった分け方ができます。重さも1台約365gなので、小分けしやすい構成です。

故障の影響を1台分に抑える

1台が故障しても、残り9台を使えます。大容量電源を1台だけ持つ構成より、電源を分散できるのは利点です。

ただし、管理や点検が必要なバッテリーも10台へ増えます。故障への強さと、管理対象の多さは表裏一体です。

モバイルバッテリー10台で難しいこと

電子レンジや電気ケトルを動かす

一般的な電子レンジ、電気ケトル、ドライヤー、電気ストーブなどは大きなAC出力を必要とします。

USB-C最大45Wのモバイルバッテリーでは、そのまま動かせません。10台を並べても同じです。

なお、Jackery 600 Plusも定格出力は800Wです。1,200Wや1,400Wを必要とする家電を何でも動かせるわけではありません。接続する家電の定格消費電力と、ポータブル電源の定格出力を照合する必要があります。

一般的なWi-FiルーターやONUを簡単に動かす

Wi-FiルーターやONUには、ACアダプターを使う製品が多くあります。USB給電に対応していなければ、モバイルバッテリーを直接つなげません。

電圧、端子、極性の合う専用ケーブルや変換機器を使える場合もありますが、仕様の確認が必要です。分からない機器へ無理に接続するのは避けてください。

ACコンセントを備えたポータブル電源なら、ルーターとONUの純正ACアダプターを使いやすい点で有利です。ただし、停電時には上流の通信設備も止まる可能性があり、給電すれば必ずインターネットが使えるとは限りません。

停電中に10台を充電し直す

使い切った後の再充電も問題になります。

今回のAnker製品は最大30W入力に対応し、1台を約4時間で満充電にできると案内されています。

1個の充電ポートで順番に充電した場合、単純計算では約40時間です。

複数の充電器を使えば短縮できますが、10台分のUSBポート、ケーブル、電力配分を管理しなければなりません。停電復旧後に10台が一斉にコンセントへ集まる様子は、前の記事で考えた「コンセント1口生活」と相性が悪すぎます。

ポータブル電源の強みは容量より変換機能にある

今回の比較で分かったのは、ポータブル電源の価値は単なるバッテリー容量ではないということです。

  • AC100Vを出力できる
  • 複数のUSBポートやDC出力をまとめて使える
  • 大きな電力を1台の機器へ供給できる
  • 残量と入出力を一括で確認しやすい
  • 本体をまとめて充電できる
  • ソーラーパネルに対応する製品がある
  • UPS機能を備えた製品もある

モバイルバッテリー10台は、小さな電源が10個ある状態です。ポータブル電源は、大きな容量をさまざまな機器へ使える形に変換し、まとめて管理する装置です。

容量だけなら10台方式が勝っても、使える機器の範囲ではポータブル電源が大きく上回ります。

10台方式の弱点は充電と在庫管理

モバイルバッテリーは、満充電にして棚へ置いたら終わりではありません。

  • 10台それぞれの残量を確認する
  • 10台それぞれを定期的に充電する
  • ケーブルの断線を確認する
  • 膨張や変形がないか点検する
  • 購入時期や型番を記録する
  • リコール対象になっていないか確認する

1台あたりの確認は短くても、10台になると地味に面倒です。どれを充電したのか分からなくなるため、番号を付けて管理するくらいの覚悟が必要になります。

ポータブル電源は点検対象を1台へまとめられます。ただし、その1台に異常が起きれば、蓄えていた電源をまとめて失う可能性があります。

10台あれば火災リスクも10倍になる?

バッテリーが10台あるからといって、単純に火災リスクが10倍になるとは断定できません。製品の品質、使用環境、充電方法、劣化状態が異なるためです。

ただし、点検すべきリチウムイオン電池が10台になることは確かです。

消防庁の資料では、モバイルバッテリーに関係する出火原因として、高温下での使用・保管、外部からの衝撃、誤った充電方法などが挙げられています。

  • 高温になる車内へ放置しない
  • 水にぬらさない
  • 落下や強い衝撃を避ける
  • 異常に熱くなる製品は使用を中止する
  • 膨張や変形が見られる製品は使わない
  • 就寝中や不在時の充電を避ける
  • メーカー指定の方法で充電する

NITEは、ポータブル電源についても高温、衝撃、水ぬれを避け、リコール情報を確認するよう案内しています。容量が大きい製品では、事故時の発熱量も大きくなるため注意が必要です。

どちらを選んでも「大容量だから安心」で終わらず、保管と点検まで含めて防災用品です。

モバイルバッテリーに膨張や変形が見られた場合は、モバイルバッテリーが膨らんだらどうする?使用中止と処分方法を解説も確認してください。

結局どちらが停電に強いのか

用途有利な選択
スマートフォンを何度も充電するモバイルバッテリー10台
家族へ電源を分配するモバイルバッテリー10台
避難時に小分けして持ち出すモバイルバッテリー10台
1台故障しても電源を残すモバイルバッテリー10台
AC100V家電を動かすポータブル電源
高い出力を1台へ供給するポータブル電源
充電と残量をまとめて管理するポータブル電源
ソーラー充電を利用する対応ポータブル電源

スマートフォン、USBライト、小型扇風機、防災ラジオだけを守るなら、モバイルバッテリー10台でも停電とかなり戦えます。

一方、冷蔵庫、電気毛布、テレビ、Wi-Fiルーターの純正ACアダプターなどを使いたいなら、ポータブル電源が必要です。

「何を何時間動かしたいか」を決めないまま容量だけ比べると、数字の大きいほうが強く見えます。しかし、実際の停電では、出力方法の違いが容量以上に効いてきます。

現実的には両方を組み合わせるのが強い

ここまで10台対1台で戦わせてきましたが、現実的な答えは組み合わせです。

  • ポータブル電源:AC家電、照明、通信機器
  • 20,000mAhモバイルバッテリー:スマートフォンと持ち出し用
  • 10,000mAhモバイルバッテリー:普段使いと予備
  • 乾電池式ライト・ラジオ:充電池へ依存しない予備

自分なら、モバイルバッテリー10台へ全額を投入するより、中容量ポータブル電源1台と20,000mAh級を2台程度に分けます。

これならAC出力を確保しつつ、避難時に持ち出せる電源と故障時の予備も残せます。少し面白みに欠ける結論ですが、防災用品は最後に現実へ戻ったほうがいいと思います。

停電が3日続く場合に必要な装備は、「大規模停電が3日続いたら何が必要?スマホ・通信・電源を守る装備を本気で考える」でも詳しく考察しています。

まとめ

20,000mAhのモバイルバッテリーを10台集めると、合計容量は200,000mAhです。セル電圧を3.7Vと仮定した理論容量は約740Whとなり、容量の数字だけなら632Whのポータブル電源を上回ります。

重量は約3.65kg、公式価格の単純合計は5万9,900円。スマートフォンの充電だけなら、単純計算で約40回という強引ながら頼もしい装備になります。

しかし、モバイルバッテリー10台の出力を合体させることはできません。各バッテリーは最大45Wでも、1台の家電へ450Wを供給できるわけではなく、AC100V家電も直接は動かせません。

モバイルバッテリー10台は「小さな電源を配る能力」、ポータブル電源は「大きな電力をまとめて使う能力」に優れています。

今回の判定は、スマホ限定戦ならモバイルバッテリー軍団の勝ち。家電を含む停電生活ならポータブル電源の勝ちです。

そして総合優勝は、ポータブル電源1台とモバイルバッテリー数台を組み合わせた、空気を読まない混成チームになりました。

参考資料